July 13, 2005

原発革命

原発革命という新書の本があります。今のようにゴミ新書が多発していない時代ですので、書店で気軽に手にとって、興味があったので買ってみました。そうしたら、とてもエキサイティングな本で、原子力発電という技術に俄然興味がわいてきました。

感覚的にはこれから当面のエネルギーを支えていくのは原子力発電が有望のように思えます。その理由はやはり大気汚染が少ないことと、設置面積が小さいことです。コストと廃棄物が問題ですが、大気汚染や生態系破壊といった不可逆のプロセスに比べると、廃棄物処理はまだマシなようにも思えます。

本書で古川和男氏が提案するのは、次世代核分裂炉の一種で「トリウム溶融塩炉」といわれるものです。FUJIという炉を設計して提案しています。

トリウム溶融塩炉(TMSR, Thorium Molten Salt Reactor)の特徴は、安全性が高いこと、効率が高く放射性廃棄物が少ないこと、核兵器原料の拡散が起こりにくいこと、などがあげられます。また小型炉を大量生産することができ、運用も容易であるとされ、世界で急増する電力需要に対応できるとの見込みがあります。

次世代原子炉はトリウム溶融塩炉に限りません。現在で最も実用化が近いのは、ペブルベッド型高温ガス炉です。こちらも安全性が高く、運用が容易だといいわれています。

この本は、原子炉という一見古臭い技術がまだまだ多くの可能性を秘めていることを教えてくれます。これを読めば、原子炉というものについて興味と関心が湧いてくることは間違いありません。トリウム溶融塩炉の先行きはわかりませんが、この本はおすすめです。

Posted by arai at July 13, 2005 06:46 PM
Comments

世界的には良くわかりませんが...

日本限定で行けば、発電所を作れる場所が関東近くには無くて、電力需要自体、昼夜で結構な差があるので、これ以上原発化は難しいんじゃないかな思います。
でも、揚水発電に代わる超大型蓄電設備が出来ればありかな。

工場やビル等の大型需要家に対してコジェネ化を
義務化するとかすれば、電力会社的には需要も減るので
現状でも行けると思います。
鉄塔倒壊リスクがあるので火力発電所を潰す訳にもいかないんじゃないかなーとか。

Posted by: dola on July 19, 2005 03:24 AM

もうすこし長いサイクルの話だとおもいます。
いまの原発は安全性や廃棄物の点で問題があるので、
それを置き換えるとしたらどうするかということが一点。
火力発電所はそのうち燃料不足と大気汚染で行き詰る恐れが
あるわけなので、そのときに備えることが一点。

ただ私自身としては、技術の省エネ化と、社会の省エネ化が成功すれば
日本国内のエネルギー必要量はかなり減るんじゃないかとおもってますが。

トリウム炉は既存の原発の使用済み燃料の処理などにも有用とされています。
また電力負荷への追随性も高いので、火力の置き換えも可能。
安全性は極めて高く小型であるので、設置場所を選ばない。
という触れ込みになっております。

うまくいくかどうかはともかく、既存の「原発」というやつとは
大きく異なってくるみたいです。

Posted by: arai on July 19, 2005 04:16 AM

最近、HotWiredにトリウム炉の話が出ていました。
結局、ウランが(廃棄物処理とプルトニウムの管理コストを考えなければ)十分安いので、メリットはないということのようで。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050712301.html

Posted by: kmori on July 20, 2005 12:31 AM

廃棄物処理とプルトニウムの管理コストが原発でもっとも大きいコストのような気がしますが。どうなんでしょ。

Posted by: arai on July 20, 2005 02:06 PM

トリウムサイクルは、トリウム(自体は核燃料ではなく、現在考えられているFBRサイクルにおけるウラン238に当たる)が中性子照射によってウラン233を生成し、このウラン233を燃料とするという考えです。ウラン233を生成して抽出しようとすると、プルトニウムとは比較にならないくらい放射線量が高いので、核不拡散に役立つという意見もありますが、トリウムサイクル自体は過去の遺物であると考える研究者がほとんどでしょう。
溶融塩炉というのは、乱暴に言えば、乾式再処理システムを原子炉内に統合した増殖炉です。
関連技術を研究している人がほとんどいないそんなシステムに夢を抱くより、現行技術を磨くことのほうが効率的だと私は考えます。要するに、もんじゅ以降の研究を進める方が得策です。
ちなみに、ウランが安いから云々はここ数十年で条件が変わります。ウラン235だけを使うつもりなら、その可採埋蔵量は石油よりも少ないかも知れないくらいですから。

Posted by: kkojima on July 21, 2005 10:58 AM

はい。実現性で考えるとどうなのかな、とおもいます。
ただ原子炉に夢があるということが面白いところです。

でも高速増殖炉関連もちょっと挫折気味ではないですか。
制御が難しく、またプルトニウムがたくさん必要になっちゃいますしね。

Posted by: arai on July 21, 2005 11:58 AM

原子炉に夢があるというだけなら、そういうシステムは他にも色々あって、Na冷却FBRだって夢があるわけです。ただ、実際に立地して運転しようとしているので、反対者がいます。トリウム溶融塩炉にはそういう反対者がいるようには思えません(概念しかないものに反対する人は少ないでしょう)ので、そういう「悪い評判」を聞かないから、良いものであるような印象を持っただけではないかと疑ってみる必要もあります。
そういう意味では、サイクル機構等の研究者にレビューしてもらえばいいのではないかと思いますが。
ただ、最近、原子力委員会の新計画策定会議で、委員のひとりが、トリウムサイクルの研究ももりこむべきではないかと発言したらしいです。
トリウムについては、インドが専ら進めていると言われています。先の委員の発言も、「インドだけが独断専行ということでいいのか?」という趣旨だったとか?

Posted by: kkojima on July 21, 2005 04:51 PM

トリウム炉に興味を持つことと、FBRに興味をもつことは相反しない、とおもいますけど。この本をよめば原子炉全般に興味が湧いてくるとおもいますよ。
著者も「もんじゅ」などはきちんと推進することをすすめています。

Posted by: arai on July 22, 2005 09:45 AM

お邪魔します。

 日本の場合は最初に「核燃料サイクルありき」になって
いるのではないでしょうか。ですから今原発に使われてい
る軽水炉よりも先に開発が始まりながら未だどこの国も実
用化できず、かつ近い将来の実用化の見通しもない高速増
殖炉は「推進」で、様々な利点があると思われるトリウム
炉はガス炉は最初から「やらない」なのではないでしょう
か。尤も高速増殖炉もここまで手間取るとは思わなかった
でしょうけど。

Posted by: ブロガー(志望) on July 24, 2005 08:04 AM
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